2020.12.30

2020年、GCFが過去最多の約300件に、コロナ禍で「健康・福祉」への寄付が加速

|過去最多のプロジェクト数

 「ガバメントクラウドファンディング🄬(GCF🄬)」は、ふるさとチョイスが2013年に国内で初めて開設した“ふるさと納税を用いたクラウドファンディング”です。ふるさと納税といえば一般的に、お礼の品、使い道の順に選択しますが、GCFはその逆。応援したいと共感した自治体の具体的な事業を選んで寄付をします。

 GCFは2020年で8年目を迎えました。プロジェクト数も年々増え、今年は過去最多の約280件に(11月2日時点)。総プロジェクト数は1000件を超えました。

年々増えていることがわかります

 総務省が17年に全国自治体に発出した「ふるさと納税のさらなる活用についての総務大臣書簡*」に“ガバメントクラウドファンディングの推進”が盛り込まれると、翌18年にプロジェクト数は倍増。19年にはふるさと納税の制度改正でお礼の品の基準が定められ、お礼の品の魅力だけではなく「使い道」への共感から寄付を募るGCFに関心が高まりました。

*総務省「ふるさと納税のさらなる活用について」(2017年9月26日)

|コロナ関連が全体の約4割

 2020年と切っても切り離せないのが“新型コロナウイルス”です。突然の事態に、各自治体はコロナ対策に多くの財源を必要としました。

 そんななか、ふるさとチョイスがGCFで立ち上げたのが“コロナ対策応援プロジェクト”です。すでに全国98自治体が実施し、約7億円が集まっています。

 医療支援はもちろん、大きく打撃を受けた観光業界や事業者、経済的に厳しい子育て家庭への補助、はたまたアルバイトのなくなった学生への支援。

 明確な目的をもったそれぞれのプロジェクトは、人々の共感を得ることができ、多くの寄付金が集まりました。

★2020年寄付総額プロジェクトランキングTOP10
※色付きが「コロナ関連」のプロジェクトです。

 今年、最も寄付が集まった北海道の医療機関支援のプロジェクトには、4月~7月の約3か月間で1億6400万円超の寄付がありました。驚くべきはそのスピードで、目標額5000万円をわずか2日で達成。寄付だけではなく、2000件超とたくさんの応援コメントも寄せられました。

▼応援コメントの一部

「医療現場の方々、今出会ったばかりの人の命を救うため懸命に戦ってくださってること、心から感謝します」
「長く厳しい冬にも耐えられる北海道民です。ウィルスにも決して負けずに頑張りましょう!厳しい環境で頑張っていらっしゃる全ての皆様にエールを送ります。私もできる範囲で頑張ります!」
「東京在住の道産子です。医療従事者をはじめご苦労されている方々の頑張りに心から感謝です。愛すべき豊かな北海道をみんなの力で取り戻しましょう」

 医療従事者への感謝を示す人、北海道庁を応援する人、北海道出身でふるさとを守りたいという人…コロナ禍を乗り越えるにあたり、それぞれの寄付の想いが一つになっています。

 上位10プロジェクトのうち6件が新型コロナ関連で、全体の約4割を占めています。例年、「こども・教育」、「災害」、「動物」のカテゴリーが寄付を集めやすいのに対し、今年は「健康・福祉」カテゴリーがプロジェクト数、寄付額ともに1位となりました。プロジェクト数は6倍にも増えています。

★カテゴリー別ランキング

「健康・福祉」カテゴリーがプロジェクト数、寄付額ともに1位です

| 東京が全国でプロジェクト数首位

 都道府県別でみると、今年は東京都内の自治体がプロジェクト数で最多となりました。

★都道府県別プロジェクト数

 東京都にふるさと納税のイメージがない人も多いのではないでしょうか。地場産品も地方のように強く押し出しているところは多くありません。

 しかし、GCFではどうでしょう。昨年はプロジェクト数20件で佐賀県と同率1位、今年は27件で単独首位。具体的な自治体の施策に共感してもらい寄付を募るという制度の趣旨を重視し、GCFに積極的に取り組んでいる傾向があります。

 具体的なプロジェクトを3つ紹介します。

| 美術や音楽のまちのブランディングに活用(墨田区)

すみだ北斎美術館の企画展に関するGCFページ

 墨田区は、葛飾北斎の生まれた地であることから、「すみだ北斎美術館」の運営資金や北斎を核とした文化芸術プロジェクト費などの資金を募っています。

 さらに、“音楽都市構想”の一環として『新日本フィルハーモニー交響楽団』とフランチャイズ契約をしています。普段、なかなか気軽に音楽に触れる機会のない中高生や医療・福祉施設の利用者などに演奏会のチケットを配る資金を集めています。

 美術や音楽など、芸術都市としてのブランディングにGCFを活用しているのです。

| 区民とともに、寄付金でコロナ対策(世田谷区)

世田谷区のコロナ対策GCFページ

 世田谷区は、コロナ対策への寄付をGCFでいち早く募った自治体の一つです。5月に実施したプロジェクトは、約1400万円が集まり、実際に区内病院などへ医療用マスクや防護服を配布しました。

 8月から第2弾として、PCR検査体制の拡充や医療的ケア児への消毒配布のために5000万円を目標として募集しています。

 ふるさと納税は、都市部に住む人が地方に寄付する傾向が強く、世田谷区はどうしても入ってくる寄付金より税控除の方が大きくなってしまいます。

 しかし、世田谷区は「区民が世田谷区にふるさと納税をすることは、“税金の使い道を自分の意思で選択すること”につながる」として区民にも積極的に寄付を呼びかけています。

| NPOと連携、継続が達成の秘訣に(佐賀県NPO支援) 

こども宅食の活動に寄付できるプロジェクトページ

 プロジェクト数で2位の佐賀では、『佐賀県NPO支援』としてGCFを何度も立ち上げています。「こども宅食」事業や、災害時に避難所に送る感染対策キット、シェアオフィスづくりなど、幅広い分野でGCFを活用しているのです。

 初めて佐賀県でGCFが実施されたのは2015年。1型糖尿病の難病治療を応援するプロジェクトです。今では終了したプロジェクトも含め合計で80件を超えました。

 何度も挑戦することで、寄付者に共感してもらうためのPR方法などのノウハウを蓄積することができます。さらに、過去と同じテーマで実施することにより、寄付者との関係が広く、深くなり、ネットワークが形成されるようになりました。

 実際に、佐賀県NPO支援では、1型糖尿病関連のGCFは10回以上実施され、寄付金はなんと合計3億円以上を集めています。

 新たにGCFに参入した自治体も、一回限りで終わらせるのではもったいない。何度もチャレンジすることで、事業の継続性にもつながります。

|2020年のGCFを振り返って

 コロナは、全国の地域に大きな打撃を与えました。

 しかし、日本の寄付文化という観点からすると、前進した一年だったかもしれません。GCFがこれほどまでコロナ禍の支援に活用され、これまで知らなかった人にも関心を持ってもらえるようになりました。

 トラストバンクは今後も、日本の課題解決、そして未来創造の手段として、GCFの活用に取り組んでいきます。

<関連ページ>
「ふるさとチョイス、「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」の2020年の総括データを発表」(2020/11/26)
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