2020年11月7日~8日、「第6回ふるさとチョイス大感謝祭オンライン」を開催しました。全国から89自治体が参加し、寄付者に使い道の報告や寄付への感謝の想いを伝えました。
例年、横浜の会場に1万人以上集まる大規模イベントですが、昨年は新型コロナウイルスの影響で初のオンライン開催に挑戦。各地の地元スポットから中継したり、首都圏だけでなく全国の寄付者が自宅から参加できたりし、地域をより体感できるイベントとなりました。
そのなかから4自治体の発表を紹介します。
アマミノクロウサギと農家さんをお友達に
「ようこそ、てぃだ(太陽)の町へ!」
元気のよい挨拶とともに迎えてくれたのは、鹿児島県徳之島町役場の堀さん。徳之島町は奄美群島にあり、11月初旬でも半袖で過ごせるほど暖かい地域です。
「まずは歓迎の意を込め、島唄をお聞きください」
赤い着物をまとった町役場の澤さんによる島唄の演奏がスタート。三味線と歌声が響き、まるで本当に徳之島町へ遊びに来たような雰囲気に包まれました。
「徳之島は人口2万人ほどの小さな島ですが、昨年(19年)は約3万件、6億5千万円のふるさと納税をいただきました。担当者と事業者さんたちは、驚きながらも感謝しています」
徳之島町はふるさと納税の寄付金を、町の中高生が首都圏で企業訪問や職場体験をする「インターンシップ教育事業」に活用しています。
「島にいると、子供たちのなりたい職業の幅がどうしても狭くなってしまう課題があります。都会で色々な方と話すことで、子供たちに大きな夢を持ってもらいたいと思いました。東京近辺の色々な企業を回りながら、職業観や生き方、働き方を学んできてもらいました」。
ほかにも、島の小学校存続のために国内留学生を受け入れる事業や、公園の遊具設置、出産祝い金、サンゴ礁の移植事業など、さまざまな地域課題に寄付金が使われています。
なかでも注力しているのが、アマミノクロウサギの保護事業です。
アマミノクロウサギは現在、世界で徳之島と奄美大島だけに生息するウサギです。一羽しか子供を産めず繁殖が難しいのですが、保護活動で少しずつ増えてきました。
しかし、数が増えたことで山から集落まで下りてくるようになり、農家さんの畑のタンカンの樹やサトウキビをかじってしまう被害が出てしまいました。
そこで立ち上げたのが、ガバメントクラウドファンディングによる「アマミノクロウサギとトモダチプロジェクト」です。
「クロウサギは、自分が食べていい樹と食べてはいけない樹がわからないのだと思います。農家さんと話し合いをして、防護柵で分けることになりました」
ガバメントクラウドファンディングの資金は、こうした食害防護柵の設置や、地元高校生の環境学習の費用に使われています。
寄付者から寄せられた意外なメッセージが、自然やクロウサギの保護だけでなく「農家さんの暮らしも守ってあげてください」というもの。
「このメッセージを農家さんに伝えたところ、今まで正直クロウサギを好きではなかった方も、みんなに愛されているクロウサギが畑に来ることを誇りに思ってくれるようになりました。被害も防げているので、農家さんとクロウサギがさらに仲良くなり、徳之島をPRしていこうと話しています」
農家さんとクロウサギをお友達に。自然や野生動物と島の人が共生できるよう、お互いに笑顔で暮らせる地域づくりにつなげています。
最後は、徳之島町の職員さんとゆるきゃらのまぶ~るくん、オンライン参加者みんなで、「おぼらだれん!(ありがとう)」の掛け声と島唄で締めくくりました。
台風被害をうけた房総ビワを復活させたい!
千葉県最南端にある南房総市。水揚げ高全国2位の伊勢海老や房州黒あわびが有名です。ほかにも、徳川吉宗の時代に始まった日本の酪農発祥地として乳製品も充実しています。
ふるさと納税の寄付金は、子ども医療費の助成や自然環境の維持などに幅広く活用しています。そのうちの一つが「災害支援」です。
2019年に台風15号の復旧・復興に向け、ふるさとチョイス災害支援では南房総市に6000万円超の寄付金が集まりました。
道の駅とみうら枇杷倶楽部から中継した南房総市の松田さんは、当時をこう語りました。
「台風が明けると、学校の体育館の壁は剝がれ、道路には電柱が倒れていました。駐車場に停めていた車は、風で倒れてぶつけ合ってしまっている状況です。台風による停電は、店舗などを含めて市内1万1千世帯を上回る規模でした」
たった一晩で、南房総市は甚大な被害を受けました。台風が上陸した当日中に災害支援の受け付けを始めたところ、すぐにたくさんの寄付が集まりました。
さらに、寄付金とともに多くの応援メッセージも届きました。
・「とてもつらい状況かと思いますが、日本中があなたを応援しています。どうか希望を失わずに生きてください」
・「想定外の被害に遭われ、大変な苦労をされていることと思います。どうかお体にはお気をつけになってください。少しでも早く復旧することを心より願っています」
これらの応援メッセージを市民が集まる電力供給場や臨時のお風呂会場などに掲示したところ、「持って帰りたい」と話す人も出てきました。お金だけでなく、寄付者からの言葉も支えとなったのです。
南房総市のふるさと納税の災害支援には、1年間で約1億3400万円もの寄付が集まりました。これらは学校の壁や道の駅の屋根の修復などに使われています。
台風被害から1年が経ちましたが、深刻な問題が残っていました。
それは、房州びわの被害です。南房総市の富浦地区は、1909年から皇室献上をしている日本有数のびわの産地。そんな大切な房州びわに危機が訪れました。
「地域の誇りある房州びわが、(台風で)根っこごと剥がされてしまったり、枝が折れてしまったりしました。びわを栽培している山の道中にも倒木があり、現地に向かえない状況でした。ハウスごとびわが潰れてしまった農家もありました」
その結果、収穫量は例年の6割程度に。100年以上続いてきた歴史ある皇室献上が、2020年は新型コロナウイルス禍もあいまって初めて中止となってしまいました。
南房総市は、この房州びわを支援するためガバメントクラウドファンディングを活用しました。さらに、かろうじて被害がなかった木の収穫量をもとに、2021年はびわ支援への寄付のお礼の品として500セットのびわを用意しました。
目標寄付額1000万円の使い道は、倒木の撤去費用やドローンを使った農地の立体マップ作製などです。このマップは、びわ農家の後継者不足にも活かす予定です。
「びわは実をつけるまで約10年かかるため、栽培をやめた農家の園地を借り受ける方が早い。木の品種や植樹面積の広さ、運搬用トロッコの有無など後継者農家向けの農地カタログを作り、びわの産業を未来につなげていくのが狙いです」
ほかにも、地元小学校でびわの収穫と販売を体験する授業を実施したところ、びわを「わたしの宝物」として作文に書いてくれた子もいました。
「この作文は、地域の皆さんが思っていることを本当によく書いてくれたと思っています」。
南房総市はふるさと納税を通じて、ただ復興するだけでなく次世代に産業をつないでいこうと前進していました。
▶南房総市松田さんのふるさとチョイスブログ「【千葉県南房総市】ずっとふるさと納税は変わり続ける!だから地域も変わり続ける!」
思わず移住したくなる!自然豊かな村暮らし
札幌市内から車で約90分にある北海道赤井川村。ふるさと納税担当の鈴木さんが村の魅力を語ります。
「4年前に東京から赤井川村に移住してきました。大都会から移住してきたわたしでも、そんなに不便に感じません。住みにくいなと思ったことは、正直ないです」
札幌や小樽など主要地域へのアクセスも悪くなく、観光客は年間100万人訪れます。
スキー場「キロロリゾート」やカルデラ温泉、山中牧場など観光地も充実。寒暖差が激しいカルデラ地形で、秋の早朝に雲海が見られたり、米やジャガイモ、アスパラなどのおいしい農作物が育ったりします。
鈴木さんが「10月に3回遭遇した」という鹿と出会うのも日常茶飯事です。
そんな赤井川村のふるさと納税の使い道に、村の人が「村に恋する」理由が詰まっていました。
たとえば、子育て支援として、子どもの保育料や医療費、給食費の無償化など、さまざまな施策に寄付金を活用しています。
「現在、小中学生は94名います。放課後に子どもたちを預かって料理をしたり、手芸をしたりしています。キロロリゾートの地域貢献として、スキーのシーズン中、子どもたちは無料で滑ることができます。そのためか、クロスカントリーやアルペンといった大会で入賞した子もいます。中学2年になると、全員がオーストラリアに国際交流へ行けます。」
村全体で子どもたちを大切に育てていることが伝わります。
高齢者に対しても、無料で温泉に入れたり、生活支援助成として雪下ろしを代行してもらえる制度があったりと、安心して暮らせるようふるさと納税が使われています。
とくに力を入れているのが就農支援です。赤井川村にはUIターンで移住してきた新規就農者が数々います。ハウスの助成や土地を借りる補助、営農実習など村は全力で応援します。
「農業を基盤産業とする赤井川村にとって本当に大切な方々です」。
また、2020年は新型コロナウイルスで親元から離れて暮らす学生13人に、特産品を詰め合わせた“応援便”を送りました。
「荷物のなかに小さなハガキを入れたところ、学生から『村のあたたかさを感じることができました』『村出身で心からよかったと思いました!』という返信がありました。こうしたことができたのも、寄付者の皆さんの応援があったからです」
ふるさと納税でこれら村の施策を応援してくれる寄付者との関わりも大事にしてます。
「現地交流会を開催し、寄付者と実際に会う、つながることをとっても大切にしています。農業が続けられるのは、食べてくれる人がいるからだと思います。道内の方を招待して一緒にアスパラを収穫して食べたり、寄付金を使って新設した保育所を見学しに行ったりしました」
今年はコロナ禍のため少人数で実施。参加してくれたお子さんが現地交流会の活動を模造紙にまとめてくれ、役場や農家の建物に掲載しました。
最後に、鈴木さんがふるさと納税に込めた想いを語りました。
「私たち、担当者が思っていることは、ふるさと納税はあくまで一つの“きっかけ”だということです。ふるさと納税をきっかけに村を知ってもらって、ソフトクリームを食べに牧場に行ってみたいな、キロロリゾートで滑ってみたいなと感じて、村にお越しいただけると嬉しいです」。
▶赤井川村鈴木さんのふるさとチョイスブログ「【北海道赤井川村】“第二のふるさと”小さな村のおはなし」
震災ですべて流され…それでも再起した3年牡蠣
岩手県陸前高田市はカキ養殖場からの中継です。市職員の丸岡さん、マルテン水産の佐々木さん、スペシャルゲストのゆるキャラ・たかたのゆめちゃんが迎えてくれました。
まず、丸岡さんから陸前高田市の現状について説明しました。
「陸前高田市は東日本大震災で1761人もの尊い命が失われ、99.5%の家屋が地震や津波の被害を受けました。産業への影響も大きく、水産業や農業の被害だけで283億円に上ります。
この9年間、震災からの復旧復興のため、国内外の方々からご支援をいただき、ようやくゴールが見えてきました。被災された方の心のケアなど課題はたくさんありますが、よりよい復興と防災減災による安全なまちづくりに取り組んでいきます」
被災した道の駅高田松原も、震災から10年となる今年3月に復興祈念公園が完成予定です。昨年度には、追悼・祈念施設や津波伝承館もオープンし、多くの人に利用されているそうです。
続いて、牡蠣を生産しているマルテン水産の佐々木さんが話しました。
「僕はこの仕事に就いて、かれこれ23~4年経ちます。約10年前の震災で、甚大な被害を受けました。幸いにも家族は無事でしたが、船もイカダも作業場もすべて流され、生業である牡蠣の生産はできなくなってしまいました。約5年前に今の加工場を設けて仕事をしています。
ふるさと納税でみなさんにお届けしている牡蠣は3年間、丹精込めて育てています。」
3年かけてじっくり育てるのがマルテン水産の牡蠣の特徴。通常、他の地域では台風によって牡蠣が流されてしまうため1~2年で漁獲します。一方、岩手は台風の影響が小さく、マガキの養殖限度となる3年かけて育てることができます。3年ものの牡蠣は地元漁師で3~4人しか作っていないそうです。
大きく育つ陸前高田の牡蠣は、5年連続で競りの最高値をたたき出しています。
なかでも、佐々木さんも「あまり目にすることがない」という1万個に1個の巨大なプレミアム牡蠣は、たかたのゆめちゃんの手ほど大きなサイズ。通常は飲食店に卸しているため、ほとんど一般の人は出会えないそう。しかしこの日は大感謝祭。日頃の感謝を込め、数量限定でふるさとチョイスにお礼の品として出しました。
オンライン参加者からは、佐々木さんにたくさんの質問が寄せられました。
―この震災10年を振り返って、嬉しかったことや苦しかったことは?
我々漁師は、津波と常に共存しています。リスクとして隣り合わせで生活しているので、必ず津波は来るなと思っていました。陸前高田の漁師に犠牲者が少ないのは、常に危機感をもって生活しているからかなと思います。
苦しかったことは、震災の日まで牡蠣の生産者が30人ほどいたところ、10人に減ってしまいました。50代くらいの生産者がみんな辞めてしまった。子どもたちが高校、大学でお金がかかる一方、養殖の3年間は無収入となってしまうので苦しいのです。うちは子供が小さかったので頑張って続けましたけど、現実的に仲間としてやっていたメンバーが辞めてしまったのがつらかったです。
―震災後、海に魚は戻ってきていますか?
震災で船を失い復活できたのが2~3年後でした。釣りや漁をした際、震災前からいたと思われる魚が今までにないほど大きくなっていました。どこにも逃げていなかったのかなと思います。
―コロナの影響はありましたか?
昨年3~5月は、飲食店からの注文がなくなってすごく影響がありました。ただ、びっくりしたことにふるさと納税からの申し込みは増えていました。
―今後の夢は?
子どもが漁業を自然に継いでくれると嬉しいですが、自分で作って自分の責任で皆さんに売る、おいしいという言葉を返してもらえる、ということは仕事としてやりがいがあるので、そんな仕事についてほしいなと思っています。
震災をきっかけに、地域と人のつながりも生まれています。
学生時代に陸前高田にボランティアに来て、わかめ漁を手伝っていた東京の女子大学生。一度、地元に帰りましたが、「やっぱり海が好きです」と約6年前に陸前高田市へ移住しました。漁協第一号の女性組合員となり、昨秋からわかめ漁師として活動しているそうです。
佐々木さんは「生産者が減った中で、若い人が増えてくれるのがうれしい」と話しました。
ふるさと納税の寄付者のなかには、若い人から「学生時代にボランティアで陸前高田へ行きました。社会人になって給料がもらえるようになったので寄付しました」とのコメントが届くこともあるそうです。
「わたしたち寄付者にできることは何でしょうか?」。オンライン参加者からの質問に、佐々木さんはこう答えました。
「陸前高田市だけで10万人以上のボランティアが来てくれました。来てくれることもうれしいですが、それぞれ皆さんがいる地域で、陸前高田のものを買って、食べてもらうこともパワーになります。今後もふるさと納税を継続してもらえればすごくありがたいです」。
ふるさと納税は、さまざまな形で地域の皆さんと寄付者をつないでいます。応援したい地域のお礼の品をもらって楽しむことも、生産者さんの励みになっていることが伝わってきました。
6回目となる2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大でイベント開催そのものが危ぶまれる状況でも、なんとか継続して感謝を伝えあう場をつくっていきたいという想いから、初のオンライン形式で実現にいたりました。
参加した寄付者の皆さんからもあたたかい感想をいただきました。
・「各地方からの配信、またご担当者のお人柄が伝わってきて、とても臨場感あって良かったです。応援しています。」
・「それぞれ自治体ごとの楽しそうなPRがとても良かったです。旅をしてみたい、食べてみたいと思える食材を知れたので、地域貢献につなぐ事ができたらいいなと思います。」
・「今回のイベントでふるさと納税に対する考えが変わりました。ふるさと納税をすることで、その自治体とのご縁ができること、役にたてる喜びを感じました。またオンラインで会える日を期待しております。」
多くの困難に直面する今だからこそ、こうして「つなぐ場」を絶やすことなく、これからもふるさと納税制度の発展に尽力していきたいと思います。
※記事中の画像は各自治体発表ブースのzoom画面から引用しました。