2020.11.17

LoGoフォーム電子申請で、行政手続きのデジタル化は進むか?

~石川県加賀市、xIDと共同記者会見~

 新型コロナウイルス感染症の拡大で、特別定額給付金の支給の遅れや混乱などに代表されるよう、行政手続きのデジタル化の課題が浮き彫りになりました。コロナ禍の収束が見えないなか、「3密回避」でもデジタル化は急務です。行政は、対面・紙・ハンコを原則とした制度や慣行を見直す必要に迫られています。

 ここでキーとなるのが、マイナンバーカードの活用です。トラストバンクは今年8月、石川県加賀市とGovTech企業のxID株式会社(東京・千代田区)とともに、行政手続きデジタル化ツール「LoGoフォーム電子申請」を発表しました。

 LoGoフォーム電子申請は、マイナンバーカードを用いて、本人確認が必要な行政手続きを対面・紙・ハンコに頼ることなく実現する電子申請フォーム作成ツールです。

 今回は、8月12日に会場(加賀市役所)とオンラインで実施し、50名近くのメディアが参加した共同記者会見の模様から、LoGoフォーム電子申請について紹介します。

共同記者会見の様子。左上から時計回りに石川県加賀市市長 宮元陸氏、トラストバンク 代表取締役 川村憲一氏、xID CEO 日下光氏。

| 全国9割の自治体ネットワークを活用

 トラストバンクは「自立した持続可能な地域をつくる」をビジョンに掲げ、2012年9月にふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営開始。今年10月時点で、同サイトを利用する自治体は1,570超(全国約9割)に上ります。

 この自治体ネットワークを強みにさまざまな事業を展開するなか、行政の働き方が抱える課題も見えてきました。

トラストバンク代表取締役川村憲一
「高齢化や人口減少により、地域の課題が多様化・複雑化している一方で、行政職員の人手不足は深刻化している。行政職員を取り巻く環境は厳しい。業務効率化は待ったなし」

 こうした背景のもと、自治体の業務をデジタルで効率化し、地域のための付加価値の高い業務時間を創出することを目指し、2019年1月にパブリックテック事業をスタート。同年11月にリリースした自治体向けビジネスチャット「LoGoチャット」は、約1年で約550自治体に広がりました(2020年10月31日時点)。

 さらに、LoGoフォーム電子申請のベースとなっている行政申請フォーム作成ツール「LoGoフォーム」は、今年3月のリリース後、約120自治体で導入され、特別定額給付金の業務効率化や住民のアンケートフォームなど行政手続きのオンライン化に活用されています(同)。

パブリテック事業のLoGoシリーズ

 そして今年8月、LoGoフォームとxID社のデジタルIDアプリ「xID」をAPI連携したサービスとして、新たに「LoGoフォーム電子申請」をリリースしました。

 LoGoフォームの「自治体職員が総合行政ネットワーク(LGWAN)ですばやく簡単に電子申請フォームを作れる」特長と、xIDアプリの「マイナンバーカードによる個人認証機能で本人性を担保し、ハンコの代替となる電子署名ができる」特長を掛け合わせたサービスです。

| “エストニア産“の行政デジタル化サービス?

 LoGoフォーム電子申請は、世界最先端の電子国家・エストニアのノウハウが詰まっています。

 エストニアと日本を拠点に活動するxIDが開発したxIDアプリは、エストニアでも浸透するデジタルID(身分証)アプリの知見が活かされています。

 2002年にエストニア版マイナンバーカード「e-IDカード」が発行され、99%の行政手続きがオンライン化されています。利便性を高めるために誕生したのが「デジタルIDアプリ」。
 一度、アプリでマイナンバーカードを紐づければ、デジタル上で公的身分証による本人性が担保され、カード本体やカードリーダーを持ち歩く必要はありません。現在、エストニア国民の35%が使っているそうです。

 さらに、LoGoフォーム電子申請のシステム開発は、トラストバンクが昨年設立したエストニア支店のエンジニアを中心に進めており、まさに“エストニア産”のサービスとなっています。

| デジタル行政で先進の加賀市が第一号

 “ファーストペンギン”として、LoGoフォーム電子申請の活用に全国で初めて挑戦する自治体が、石川県加賀市です。LoGoフォーム電子申請を使って、まずは市の人間ドック助成金申請からオンライン化し、対象の行政手続きを順次拡大していく予定です。

 加賀市は、2018年の「ブロックチェーン都市宣言」や、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による市役所業務の一部自動化など、これまでも積極的にデジタル化を推進してきました。

 また、マイナンバーカードの普及率向上のため、申請者1人につき商品券5,000円を配布するなどのプロモーション施策を展開し、市内のマイナンバーカードの普及率は54.2%(交付件数+申請件数、2020年8月末時点)と、全国の交付率17.5%(申請件数除く、2020年7月1日時点)に比べて高く、デジタル行政の基盤が整備されつつあります。

 この強みを活かし、マイナンバーカードの活用の幅を広げ、市民がいつでもどこでも行政サービスを使える未来をつくっていきたいと展望を語ったのは、加賀市の宮元陸市長。

宮元市長
「24時間どこでも電子申請が行えるようになることで、生活が豊かになることを実感してもらえるようになる。デジタル行政のモデル都市となることを目指し、住民生活の質向上や産業の活性化、産業集積につなげていきたい」

共同記者会見の様子。加賀市と東京を中継してリモートで開催しました。

| 住民にも自治体にも大きなメリット

 ここからは、LoGoフォーム電子申請の具体的な特長をみていきましょう。

 LoGoフォーム電子申請のベースとなっているLoGoフォームは、あらゆる行政サービスや業務をデジタル化する統合プラットフォームです。住民アンケートから、予防接種やイベントなどの申込み予約、庁内調査や業務管理フォームまで、住民、自治体職員に幅広く使われています。

 今回、xIDアプリをAPI連携したことで、窓口に行って本人確認が必要だった行政手続きをすべてオンラインで完結できるようになります。

 記者会見で、xIDアプリのメリットについてxIDCEOの日下光氏が語りました。

日下CEO
「一度マイナンバーカードを使ってxIDで個人認証を実施すれば、その後はスマートフォンの画面だけで身分確認ができるようになるほか、xIDと連携したサービスに生体認証でログインできるようになる。さらに、今回のLoGoフォーム電子申請のように電子署名として用いることで、ハンコを置き換えることも可能です」

xIDの画面イメージ(xID提供)

 LoGoフォーム電子申請の利用方法は、手持ちのスマートフォンにxIDアプリをダウンロードし、マイナンバーカードを読み込めば準備完了。スマートフォンなどから自治体の電子申請ページにアクセスし、xIDアプリを通じて本人確認をします。

 申請フォームには、マイナンバーに登録されている氏名や住所などの基本情報が自動入力されるため、入力の手間も軽減。情報入力後にxIDアプリで電子署名をすると、申請内容が自治体側に送信されます。

LoGoフォーム電子申請の流れ

 こうした基本情報の入力やハンコが不要という住民側のメリットはもちろん、自治体側の利便性も高いのが、LoGoフォーム電子申請の特長の1つです。

 自治体職員はプログラミング技術がなくても「ノーコード」で簡単に申請フォームを作成することができます。コロナ禍の助成金の給付など、迅速な対応が求められる場合も、自治体が自らイニシアチブをとってすばやく柔軟に行政手続きのオンライン化をすることができます。

 さらに、作成した申請フォームは、自治体同士でテンプレートとしてナレッジを共有することができ、LoGoフォーム電子申請を導入する自治体が増えるほど、より便利なサービスになっていきます。

 LoGoフォーム電子申請は今後、加賀市を皮切りに全国の自治体にも広げていく予定です。

トラストバンク代表取締役 川村
「LoGoフォーム電子申請は、3者それぞれの強みを生かして、対面・紙・ハンコに頼らずとも、いつでもどこでも住民がスマホから行政サービスに申請できるという未来を創ります。

 今後、加賀市での全国に先駆けたサービス導入で成功事例を創出し、他の地域にも行政のデジタル化を進め、持続可能な地域を創っていくことを目指していきます。」

<関連ページ>
石川県加賀市、トラストバンク、xID、 「LoGoフォーム電子申請」を全国に先駆け加賀市で提供開始(2020/08/12)
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