2025.10.24

ふるさとチョイス大感謝祭に宿る、温かい哲学【後編】情熱が灯す、ふるさと納税の「その先」

ふるさとチョイス大感謝祭に宿る、温かい哲学【後編】情熱が灯す、ふるさと納税の「その先」

大きなビジョンを支える、一人の「実感」

前編では、11年目を迎えた「ふるさとチョイス大感謝祭」が、ただのイベントではなく、人と人、地域と寄付者の「心をつなぐ」ための、壮大な試みのようであることをお伝えしました。その進化の裏には、主催者であるふるさとチョイス:トラストバンクの、時代への深いまなざしと温かい哲学がありました。
後編では、もう少し視点を深く、このプロジェクトを引っ張る、ブランドエンゲージメント部の村尾さん自身の心の中に耳を傾けることから始めたいと思います。どんなに大きなビジョンも、突き詰めれば一人の「これがやりたい」という純粋な情熱から始まることが多いからです。彼の個人的な「実感」や「感動」の先に、ふるさと納税、そして日本の未来を考えるための大切なヒントが隠されているようでした。

「未来をつなぐ」仕事がくれる、何よりのエネルギー

「この仕事のやりがいですか?…そうですね、やはりトラストバンクが大切にしているビジョン、そのものに尽きるかもしれません。効率やお金だけでは測れない価値観で、この国の未来、地域の未来をつないでいくお手伝いができる。その一員でいられるという実感こそが、私を動かす一番のエネルギーになっていますね。」
村尾さんは、穏やかに、でも確かな熱量を込めて語り始めました。彼の言葉の根っこにあるのは、「人と人とのつながり」こそが社会の温かさの源だという、揺るぎない想いのようです。その想いを強くした、忘れられない光景があると言います。



心に焼き付く、ファンミーティングの光景


「以前、ある自治体さんと寄付者さんが集まる、小さなファンミーティングを開いたことがありました。そこでの光景が、今も心に焼き付いています。自治体の職員さんが、自分の地域の魅力や抱える課題を、本当に楽しそうに、そして熱心に語るんです。それを聞く寄付者の方々も、まるで自分の故郷の話を聞くように、キラキラした目で耳を傾けていました。『自分の寄付が、この人の情熱を支え、この地域のこんな未来につながっているんだ』ということが、ひしひしと伝わってくる、本当に素敵な空間でした。」

みんなとチョイス byふるさとチョイス
「吉野町が好き」だからこそ届けたい、事業者と連携した魅力発信<後編>より




AIが進化し、あらゆる手間が省かれていく現代。私たちは、プロセスの向こう側にいる「誰か」の顔を、つい忘れがちになってしまうかもしれません。でも、村尾さんがそこで目にしたのは、その正反対の世界でした。顔が見え、想いが直接伝わることで生まれる、素晴らしい化学反応。それは、プラットフォームとして日々たくさんの情報と向き合う中では、なかなか感じることのできない「手触りのある実感」だったのでしょう。
「イベントの最後に、来てくださった方から『こんな素敵な機会を作ってくれて、本当にありがとうございます。』と声をかけていただいたこともあります。その一言で、準備期間中のどんな苦労も全部吹き飛んでしまうんです。私たちがやっていることは、間違っていなかったんだな、と。このアナログで、少し非効率かもしれない何かと何かを『つなげる』という仕事に、ものすごく大きな価値があるんだと、改めて実感する瞬間でした。」

困った時に、お客さんの顔が思い浮かぶかどうか。Webプラットフォームという、仕事の中で、村尾さんは「お客さんの顔」を知っています。そして、知るための努力を惜しみません。その誠実な姿勢こそが、彼の哲学の根っこにあるものであり、大感謝祭というイベントに人間的な温もりを与えているのだと感じました。

黒子から「語り部」へ。プラットフォーマーの新たな挑戦

これまでふるさとチョイスは、どちらかといえば「縁の下の力持ち」という姿勢を大切にしてきました。主役はあくまで地域であり、寄付者の方々。その謙虚さはとても素敵なことです。一方で、村尾さんはそこに新しい可能性も感じ始めています。
「私たちは、地域の皆さんのおかげで成り立っています。その感謝の気持ちは、もちろん大前提です。でも、それだけでは伝えきれないこともあるのではないか、と。『私たちふるさとチョイス:トラストバンクが、なぜこの事業をしているのか。』『ふるさと納税を通じて、どんな社会になったら素敵だろうと考えているのか。』その想いを、もっと私たち自身の言葉で伝えていくべきではないか、という話が社内でも増えてきました。」
これは、プラットフォームとしての意識の変化を意味します。単に場を提供するだけの「黒子」のような存在から、自らの考えを掲げ、社会に優しく語りかける「語り部」のような存在へ。その変化は、寄付者、地域、そしてプラットフォームという三者の関係を、より強い絆で結ぶことにつながるかもしれません。

「『ふるさとチョイス:トラストバンクと一緒に、地域の未来を考えたい』。そう思っていただけるような存在になりたいんです。そのためには、私たちの価値観やビジョンを、もっとオープンに伝えていく必要がある。今回の大感謝祭も、そのための大切な要素の一つだと考えています。」
彼らが語りたい物語の中心にあるのは、ふるさと納税という仕組みが持つ、本来の「素晴らしさ」です。

ふるさと納税は、未来への「きっかけ」を贈る仕組み

「2025年10月の制度改正など、ふるさと納税を取り巻く環境は常に変化しています。つい、返礼品がどう、という話になりがちですが、私たちはそのもっと奥にある本質的な価値を、諦めずに伝え続けていく必要があると考えています。」
村尾さんの目は、目の前のイベントの成功だけでなく、その先にある日本の未来の姿を捉えているようでした。彼が考えるふるさと納税の本質。それは、「自分の故郷や応援したい地域を、自分の意思で選び、その未来に少しだけ関わることができる、素敵な手段」であるということです。
「この大感謝祭のようなリアルなイベントが果たすべき役割は、まさにそこにあります。誰が、どんな顔で、どんな想いで地域を良くしようと頑張っているのか。その『顔』を知ってもらうこと。その『声』に耳を傾けてもらうこと。それこそが、私たちのいちばん大切な役割だと考えています。」



日本の未来に、優しいまなざしを向けるために


日本がこれから向き合っていく、少子高齢化や地方の活力といった課題。それは、ある日突然現れたものではなく、ゆっくりと、でも確実に進んできたことです。 「私たちが日々触れている、地域の素敵な営みや、守るべき文化が、少しずつ失われてしまうかもしれない。その現実に、多くの人はまだ気づいていないかもしれません。でも、このままではいつか後悔する日が来ることになるかもしれない。ふるさと納税やこの大感謝祭が、そうした日本の未来に、少しだけ目を向ける『きっかけ』になったら、こんなに嬉しいことはありません。」
人は、ただ事実を知らされるだけでは、なかなか行動には移せないものです。でも、誰かの情熱に触れたり、美しい風景に心を動かされたり、そんな「実感」が人を動かすことがあります。イベントとは、その「実感」を生み出すための、温かい装置なのかもしれません。



記憶に残る「体験」を、これからも

テクノロジーが進化して、私たちの暮らしはどんどん便利になっていきます。その一方で、人間はますます「手触りのある」リアルな体験や、心のつながりを求めるようになるのではないでしょうか。効率化できるところは賢く効率化し、そこで生まれた時間やエネルギーを、もっと人間らしい感動や温もりのために使う。村尾さんのお話は、そんな未来の姿を私たちに示してくれているようでした。
インタビューの最後に、村尾さんはこう締めくくってくれました。 「ただ通り過ぎていく毎日ではなく、人の心に体験として残るような、そんな仕事をしていきたいですね。」
ふるさとチョイス大感謝祭は、もはや単なるイベントという枠を超えて、デジタル化が進む社会での人のあり方を問い、日本の未来をみんなで考えるための「広場」であり、「問い」そのもののようにも感じられます。
効率だけでは測れない価値を信じ、少し手間のかかる「人と人とのつながり」の場作りに情熱を注ぐ。村尾さんとふるさとチョイス:トラストバンクの挑戦は、便利さと引き換えに私たちが忘れかけていた大切な何かを、優しく、でも力強く思い出させてくれるようです。彼らが創り出す熱気の渦の中には、これからの日本を考えるための、たくさんのヒントが散りばめられているに違いありません。

村尾 明仁 (むらお あきひと)

神奈川県横浜市出身
CM・Webのプロダクションを経て、大手化粧品メーカーの宣伝部やマーケティング部において広告制作、コミュニケーション戦略に従事。
その傍ら、個人としてNPO法人主催の地域事業構想支援プログラムに参加。
2021年にトラストバンクに業務委託として関わり始め、2022年にブランド企画部門のマネージャーとして着任後、ブランド戦略、リアルイベントの企画・実施を担当(ふるさとチョイス大感謝祭、ふるさとチョイスAWARD、みんなとチョイス)
2024年よりブランドエンゲージメント部にてブランド活動の企画、運用を担当。

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