前編では、AI活用の旗振り役として、チームに新たな変化をもたらした長谷山さんの挑戦を追った。最新技術を駆使し、業務改善の最前線を走る彼女。しかし、その活躍の基盤には、日々の地道な業務に真摯に向き合う、もう一つの顔があった。
後編では、彼女のメイン業務である「ふるさとチョイス」の決済運用、そして、その仕事観に深く根ざした「縁の下の力持ち」としてのやりがい、仲間への想いに迫る。彼女のひたむきな頑張りの源泉は、どこにあるのだろうか。
事業の根幹を支える、決済運用の「守り人」
「私のメインの仕事は、『ふるさとチョイス』の決済運用業務です。」
AI活用の華々しい側面に光が当たりがちだが、彼女の日常は、この言葉に集約される。ふるさとチョイスにおける寄付の決済は、サービスの信頼性を担保する、まさに事業の根幹だ。その重要な領域で、彼女は日夜、自治体や決済会社からの問い合わせに対応している。
「決済エラーの原因を調べてほしいといった問い合わせから、不正利用対策に関する専門的な質問まで、内容は多岐にわたります。一つひとつ、丁寧かつ正確に対応していくことが求められます。」
一見、地味でルーティンワークに見えるかもしれない。しかし、この「当たり前」を揺るぎないものにすることこそが、彼女のミッションだ。そのために、彼女は常に改善の視点を忘れない。
「過去に一度、この決済運用チームを離れて、別部署に行き、再び戻ってきた経験があるんです。だからこそ、客観的な視点で『もっとこうすれば、みんなが楽になるんじゃないか』という点に、今は気づきやすいのかもしれません」
その気づきを形にしたのが、詳細なマニュアルの作成や業務フローの改善だ。誰が対応しても同じ品質を保てるように、複雑な問い合わせパターンを整理し、対応手順を標準化していく。自分が楽をするためではない。「みんなが」スムーズに働けるように。その想いが、彼女を突き動かしている。
「私が楽する」より「みんなが楽する」改善に込められた想い
「こういう細かいことの積み重ねが、結局は一番大事なんだと思っています」
長谷山さんの言葉には、実感がこもる。一つひとつの決済、一件一件の問い合わせ。その先には、寄付者、自治体、そして決済会社がいる。小さなミスが、サービスの信頼を大きく損なうことになりかねない。だからこそ、彼女は細部にまで神経を配る。
彼女がメンバーと作り上げたマニュアルは、単なる手順書ではない。過去の失敗や成功、そして仲間たちの知恵が詰まった、チームの貴重な財産だ。そのマニュアルがあるからこそ、他のメンバーは安心して業務に取り組むことができる。彼女の地道な努力が、チーム全体のパフォーマンスを底上げしているのだ。
その姿は、まさしく「縁の下の力持ち」
しかし、彼女自身はその役割に、どのような想いを抱いているのだろうか。
誰かの「ありがとう」が、私の喜び。ひたむきな想いの源泉
「やりがいを感じるのは、どんな時ですか?」
この問いに対する彼女の答えは、驚くほど利他的だった。
「他のメンバーが、自治体さんや他部署の人から褒められたり、『ありがとう』と言われたりしているのを見聞きした時ですね。『ああ、よかったな』って、自分のことのように嬉しくなります。」
自分が賞賛されることよりも、仲間の成功を喜ぶ。その屈託のない笑顔に、彼女の人間性が凝縮されていた。
「とにかく優秀なメンバーが揃っているチームなんです。でも、どんなにすごい選手が集まったチームでも、環境が整っていなければ勝負に勝てないのと同じで。個々のメンバーが最大限に能力を発揮できるような、そんな環境や土台を作ることが、私の役割なのかなと思っています」
「スター軍団でも必ず勝てるわけではない」というスポーツチームの例えの通り、個が輝くためには、それを支える組織の力、そして見えない場所で汗を流す人間の存在が不可欠だ。そのことを、彼女はこれまでの経験で理解している。仲間からの信頼、そして仲間への貢献。それこそが、彼女のひたむきな頑張りを支える、何よりの原動力だった。
チームの「寄り所」として。未来へ向けて挑戦したいこと
最後に、今後の挑戦について尋ねた。彼女の口から語られたのは、AIというツールを使った、さらなるチームへの貢献だった。
「これからも、チームのみんなが安心して働ける『寄り所』のような存在でありたいです。何か困ったことがあった時に、『とりあえず長谷山に聞いてみよう』と思ってもらえるような。」
その想いを実現するための手段として、彼女はAIのさらなる活用を見据えている。
「今、チームで蓄積してきた問い合わせの対応履歴をAIに学習させて、一次回答を自動で生成できるような仕組みを作ろうとしています。そうすれば、メンバーはもっと創造的で、付加価値の高い業務に集中できるようになる。AIはどんどん進化していくので、私たちの業務改善も、それに合わせて進化させていきたいですね。」
それは、AIに仕事を奪われる未来ではない。AIを使いこなし、人がより「人らしい」仕事に集中するための未来だ。その仕組みを作るのもまた、人。彼女は、その未来をデザインする側に立つことを選んだ。
インタビューを通して見えてきたのは、最新技術への鋭い探究心と、仲間を想う温かい心。その二つを併せ持つ、類まれなバランス感覚だった。
AI活用という最先端の挑戦も、日々の地道な業務改善も、その根底にあるのは「チームのために」「仲間のために」という、一貫した利他の精神だ。
ひたむきな努力を、誰も見ていない場所で静かに続ける。誰かの「ありがとう」を、自分の喜びとして噛みしめる。長谷山さんのような存在がいるからこそ、私たちの組織は強く、そして優しくあれるのだろう。
彼女の挑戦は、まだ始まったばかりだ。チームの「寄り所」として、そして会社の未来を創る変革者として。その歩みは、これからも多くの仲間に勇気と希望を与え続けていくに違いない。
長谷山 麻美(はせやま あさみ)
埼玉県上尾市出身 大妻女子大学を卒業後、クレジットカード会社にて個人営業、訴訟代理人業務を担当。
現在は自治体・社内・決済会社からの決済回りの問い合わせ対応や運用、クレジットカード不正利用対策、自チーム向けの生成AIを活用した業務改善に奮闘中。