2025.08.29

トラストバンクは、なぜ今「生成AI」に本気なのか。新組織「OASIS」誕生の裏側と、未来への展望

トラストバンクは、なぜ今「生成AI」に本気なのか。新組織「OASIS」誕生の裏側と、未来への展望

2025年、株式会社トラストバンクに、確かな変化が起きた。全社横断の生成AI推進チーム、その名を「OASIS(オアシス)」
COOの号令からわずか数日でチーム設立が決定し、メンバーを公募すれば、瞬く間に全社員の2割にあたる50人もの熱意ある手が挙がった。
この動きは、世の中のAIブームに安易に乗ったものではない。そこには、会社の未来を見据えるCOOの強い危機感と、一人の社員の的確な提言から始まった、熱を帯びたストーリーが存在した。
なぜ今、会社は全社を挙げて生成AIの活用へと舵を切るのか。プロジェクトの発起人であり、その推進役を担う情報システム部の山下さんに、誕生の裏側と未来への揺るぎない展望を詳しく聞いた。

山下 陽一(やました よういち)

長野県上田市出身。
大学卒業後、東京ではPG/SEとして主に金融システム開発に携わり、プロジェクトマネージャとして従事。
その後Uターンし、製造業の情報システム部門で「ひとり情シス」としてDX推進やISMS運用、ネットワーク構築(WAN/LAN)、基幹システム導入などを経験。
「地域の可能性を共創する」姿勢に共感し、2024年にトラストバンクへ入社。
情報システム部として、運用インフラ領域を主に様々な業務に関わる。

きっかけはCOOへの直談判。「本気なら、トップ直轄でやるべきだ」

「もともと小室さん(COO)の中に、トラストバンクをもう一段階上のステージに引き上げるためのエンジンとして、生成AIを活用しなければならないという、すごく強い思いがあったんです。」
山下さんは、ことの始まりをそう静かに語り出した。発端は、彼が小室さんに投げかけた一つの進言だった。「AI推進を本気でやるなら、中途半端なやり方では恐らく失敗します」と。

「前職でDX推進を経験し、部門横断プロジェクトが掛け声倒れに終わり、形骸化していく様を何度も目の当たりにしてきました。結局、経営層が本気でコミットしなかったり、各部署の協力体制が整わなかったりすると、推進担当者が孤立して何も動かせずに終わってしまう。だからこそ、本気でやるならCOO直轄の専門チームを組織し、全社に横串を刺すという覚悟を見せなければ、この会社は動かないのではないかと思います、と伝えました。」
その言葉は、まさに乾いた大地に染み込む水のように、経営層が抱いていた課題意識の核心を突いた。実は、その時点で社内には各部署でAI活用を独自に模索する意欲的な担当者が点在していた。しかし、彼、彼女らは十分なサポートも情報共有の場もないまま、たった一人で課題と向き合う「孤軍奮闘」を強いられていたのではないかという仮説があったという。そのもどかしい状況を把握しはじめていたCOOの危機感と、山下さんの具体的な提言が、運命的に合致した瞬間だった。
「COOが抱く未来への思いを、確実に実行部隊として体現する専門チーム。それが、このプロジェクトの揺るがない原点です。」

「OASIS」の名に込めた、二つの意味と決意

組織名は、AIを使ってリストアップした30〜40の候補の中から、驚くほどのスピードで決定された。「最終的な決め手は、語感の良さでしたね。」と山下さんは少し笑みをこぼす。
「日本語の正式名称である『AI戦略統合推進室(Organization for AI Strategy Integration & Support)』と、その頭文字から成る英語の略称『OASIS』。どちらの響きも、我々が目指す方向性をすっきりと、そしてポジティブに表現してくれました。」

候補には「スパーク」や「プリズム」といった躍動感のある名前もあったが、最も多くのメンバーの心を掴んだのが「OASIS」だった。そして、この名前には後から、プロジェクトの理念を象徴する二つの重要な意味が込められることになった。

一つは、「砂漠のオアシス」としての役割。
社内で孤軍奮闘していたであろう各部署の担当者たちがここに集い、乾いた喉を潤すように知識を交換し、安心して一息つける場所になるという願い。
もう一つは、「知の泉」としての存在。
多様な情報、試行錯誤の記録、そして成功事例が集積し、そこから新たな価値創造のアイデアが尽きることなく湧き出る源泉となるという決意だ。
「OASIS」は、もはや単なる組織名ではない。それは、これから始まるトラストバンクの新たな文化形成を牽引する、確固たる旗印なのである。


「時計の進み方が変わる」—設立までわずか数日の超スピード劇

このプロジェクトの異質さと本気度を最も象徴するのが、その設立に至るまでの圧倒的なスピード感だ。
「『やりましょう』と正式に決まったのが、水曜日のことでした。そして、小室さんから出た指示は、『来週月曜日の全社会議で発表するから、それまでに設立趣意からメンバー募集の準備まで、すべて整えてください』と。残された時間は、本当に数日しかありませんでした。」

設立趣意の策定、活動内容を視覚的に伝えるインフォグラフィックの制作、そしてメンバー募集フォームの作成。通常であれば数週間を要してもおかしくない一連のタスクを、中心メンバーは驚異的な集中力でやり遂げた。その最大の原動力となったのが、皮肉にも、これから全社に広めようとしている生成AIそのものの活用だった。
「本当に、仕事における時計の進み方が根本から変わります。文章の土台作りからデザイン案の創出、タスクの整理まで、生成AIをフル活用したからこそ、このスピードが実現できた。まさに、これから全社で目指していく新しい働き方を、我々自身が最初に身をもって体現した形です。」

目指すは「生産性2倍」。その先に描く、本当の未来

「OASIS」が掲げる最大の目標は、COOが全社に宣言した「一人あたりの生産性を2倍に引き上げる」という、極めて高く、挑戦的なハードルの達成だ。
「これは決して夢物語や精神論ではありません。現に、本気でAI活用に取り組んでいる先進企業は、それを現実的なロードマップとして公表し、実現しつつある。我々も、正しいプロセスを踏めば必ず達成できると信じています。」

これまでも、プロダクト開発の現場など、部分最適化されたAI活用は進んでいた。しかし、会社全体のビジネスを加速させるという大きな視点では、その動きは連携を欠き、限定的だった。「OASIS」の使命は、そこに強力なエンジンを搭載し、全社を一つの方向へと巻き込んでいくことにある。
「ここで最も重要なのは、この取り組みが『自分たちが楽をするため』では断じてない、ということです。」と山下さんは語気を強める。
「業務効率化によって生み出された貴重な時間やコストというリソースを、何に再投資するのか。我々はそれを、既存サービスの品質向上や、新たなユーザー価値を創造するための施策、そして地域への貢献活動に充てていきます。そうして、トラストバンクが究極の目標として掲げるビジョン『自立した持続可能な地域をつくる』の実現を加速させる。そのための生産性向上なんです。この大義を、メンバー全員で深く共有することが、何よりも大切だと考えています。」


嬉しい悲鳴。予想を遥かに超えた「50人」の熱意と、次なる課題


当初、山下さんはメンバー集めに苦戦することを覚悟していた。「実装までできる技術者が5人くらい集まってくれたら御の字。最悪、各部署にお願いして、なんとか一人ずつ人員を捻出してもらう形になるだろう、と」。
しかし、蓋を開けてみれば、その控えめな予想は良い意味で完全に裏切られた。募集開始からわずか数日で、エントリー数は37人(インタビュー時点)に達したのだ。※最終的には50人の部署横断チームに。
「本当に、嬉しい悲鳴とはこのことです。これだけ多くの仲間が、会社の未来を“自分ごと”として捉え、当事者意識を持ってくれている。その事実に、言葉にならないほどの大きな可能性を感じています。」

今後は、この大きなチームをテーマごとの分科会に分け、より具体的で実践的な活動を本格化させていく計画だ。初心者向けの研修プログラムの整備、全社共通のAIツール活用ガイドラインの作成、業務に直結する実践的なプロンプト集の共有など、やりたいこと、やるべきことは山積みだ。
「まずは『何から手をつけていいか分からない』という社員の皆さんの、心理的なハードルを取り払う活動を徹底的に行います。誰もが当たり前に生成AIを使いこなし、試行錯誤に悩む時間をなくす。それが、組織全体の生産性を底上げする、最も確実な一歩になるはずです。」

挑戦は始まったばかり。この熱を、一過性の「祭り」で終わらせないために

「最大の失敗は、この活動が形骸化することです。」山下さんは、過去の経験を踏まえて自らに言い聞かせるように語る。
その轍を踏まないために、社内広報チームとも密に連携し、活動の進捗や具体的な成果を定期的に発信し続ける。いずれは広報PRと連携して、プレスリリースとして対外的に公表し、「我々は本気だ」という後戻りできない覚悟を示すことも視野に入れている。
COOの揺るぎない意志と、現場から湧き上がった熱意が交差して生まれた「OASIS」
それは、単なる業務改善プロジェクトではない。トラストバンクという組織の働き方を根本から再定義し、メンバー一人ひとりのポテンシャルを最大限に解放し、企業文化そのものを未来へと進化させるための、壮大な挑戦の始まりに他ならない。
この熱を、一過性の「祭り」で終わらせず、持続可能な「文化」として根付かせることができるか、今後の活動とそれによって起こる変化がとても楽しみだ。

クリップボードにコピーしました