2021.08.20

世界自然遺産の奄美・沖縄の自然を守り継承したい 7自治体で広域連携GCFを開始

夏に一度は訪れたい日本の「南の島」といえば、奄美と沖縄。

なかでも鹿児島県から沖縄県の南西諸島にまたがる奄美大島、徳之島、沖縄県北部と西表島は、国内最大級の亜熱帯照葉樹林があり、絶滅危惧種を含む多くの生き物がいる美しい場所です。

7月末、この「奄美大島、徳之島、沖縄県北部及び西表島(奄美・沖縄)」が世界自然遺産に登録されました。屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島に続く、国内5番目の登録です。 

世界自然遺産の登録で観光客の増加や地域経済の発展が見込まれる一方、自治体は遺産価値を維持・継承するための保護活動をしていく必要があります。

そこでトラストバンクは「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」で、奄美・沖縄の世界自然遺産保護を目的とした7自治体による広域連携GCFプロジェクトを8月13日に開始しました。

ふるさとチョイスの広域連携GCFページ(2021/08/20時点)

広域連携GCFとは、共通の課題解決を目的に各自治体が実施するGCFをまとめる取り組み。今回は「奄美・沖縄の世界自然遺産の保護」で協力しあいます。鹿児島県奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町、天城町が 8月13日~11月10日、沖縄県竹富町が 7 月2日~9月29日に目標寄付額計2750万円を集めます。

奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町の5自治体とトラストバンクは8月13日、奄美市役所で共同記者会見をしました。会見の模様と、プロジェクトを担当した寄付文化ブランディングチーム・嶋宮さゆりさんへのインタビューを紹介します。

| 奄美の美しい自然を守る、自治体がGCFに込めた想い

奄美市役所で記者会見し、Zoomでオンライン配信しました

鹿児島県奄美市は、国の特別天然記念物アマミノクロウサギの交通事故「ロードキル」が多発していることから、「奄美の森に棲む生き物たちへの思いやり運転普及&見守りプロジェクト」として目標寄付額300万円を募ります。

寄付金は小学生を対象にロードキル対策を学ぶワークショップと、監視カメラによるアマミノクロウサギの見守りや生態調査に使います。

朝山毅奄美市長は会見でプロジェクトの2つの目標を掲げ、こう意気込みました。

朝山毅奄美市長

朝山毅奄美市長
「(GCFを通じて)世界自然遺産登録の意義を認識してもらい、生物多様性の保存と継承にしっかりと取り組んでいきます。さらに、これらの資源を活用して奄美の産業振興を含め、奄美市の製造業者や販売業者の返礼品をしっかりとお届けできる環境づくりをしていきます。寄付金は自然遺産を保存・継承するために有効活用して、経済的な効果と自然遺産を守っていきたいです」

大和村では、世界自然遺産区域にある森林浴公園「奄美フォレストポリス」の水辺の広場に住む生物の生息環境改善が課題です。そこで、広場から土砂を取り除き水辺の環境を再整備するプロジェクトで目標寄付額700万円を募ります。

泉有智副村長はプロジェクトの背景と目的についてこう語りました。

泉有智大和村副村長

泉有智大和村副村長
「近年の豪雨や大型台風で公園の川や池に土砂が堆積し、通常の人力の維持管理では対応できないほどの状況です。そのため、本事業では命を育む水辺を守り、奄美フォレストポリスを『人と自然が共生できる憩いの空間』として水辺の広場の再整備を行いたいと考えています。

世界自然遺産の評価基準である生物多様性を体現できる公園として多くの人に訪れてもらい、課外学習など環境教育の場を提供していきたい。世界自然遺産の価値を守り次世代に継承するため、取り組みに賛同してもらえると嬉しいです」

宇検村は、子どもたちへの環境教育の一環として「世界自然遺産博士講座」を開催するため目標寄付額100万円を募ります。

その背景には、元山公知村長のこんな思いがありました。

元山公知宇検村長

元山公知宇検村長
「この豊かな自然を上手に活用しながら、何世代にもわたって守り繋げてきた先人たちに尊敬と感謝の念を強くしています。持続可能な生活に向き合い、この自然環境を次の世代へ守り繋げていくことが私たち一人ひとりの使命です。そのためには、まず身近な自然や文化について知ることが一番大切だと考えました」

講座ではさまざまな分野から講師を招き、子どもたちに身近な自然や文化について知ってもらいます。すでに3回実施し、最後の9回目には子どもたちが学んだことを発表する予定です。元山村長は、講座を通した環境学習の効果に期待を膨らませます。

元山公知宇検村長
「村内の学校教育や社会教育でも、子どもから大人まで世界自然遺産を学び、考え、発信する環境学習を充実していきたいと考えています。動画配信や経過報告をすることで、交流・関係人口の拡大にもつながることを期待しています」

瀬戸内町ではアマミノクロウサギの「ロードキル」問題や農作物などの食害防止が課題です。また、世界自然遺産登録で増加が見込まれる観光客のごみ問題などの治安悪化にも対応が必要です。

そのためプロジェクトでは、ロードキル対策としての看板製作▽農作物の食害防止柵の設置▽観光客の利用ルールやマナーを周知する看板製作のため、目標寄付額300万円を募ります。

鎌田愛人瀬戸内町長

鎌田愛人瀬戸内町長
「瀬戸内町は世界の一員として地球温暖化対策を図るべく、ゼロカーボンシティ宣言をしました。地球環境と合わせて奄美の自然環境や希少野生動植物を未来のために保全・保護し、世界自然遺産の登録にふさわしい奄美大島・瀬戸内町になるよう、島民や町民とともに取り組んでいきます」

龍郷町は奄美の美しい自然を次世代に伝え続けるため、全国の小中学生が対象のイラストコンテスト「奄美大島たつごうの自然を描こう!コンテスト」の開催費として350万円を募ります。

竹田泰典町長は、龍郷町の世界自然遺産登録とコンテストが持つ意味をこう考えます。

竹田泰典龍郷町長

竹田泰典龍郷町長
「世界自然遺産登録はそれ自体が目的ではなく、先人が守りついできた貴重な自然を後世に伝える1つの手法だと考えています。子供たちに奄美大島の自然の素晴らしさを絵を通して再確認してもらい、新たな気づきを得るきっかけとなることを期待しています。

ガバメントクラウドファンディングを活用するため、寄付者の部も設けました。企画に賛同し寄付してくださった人からもたくさんの応募をお待ちしています。奄美大島の自然をPRするため、多くの人に関心をもってもらい、この素晴らしい自然を未来永劫にわたり残していきたいです」

トラストバンク代表取締役の川村憲一は奄美大島の伝統織物「大島紬」の装いで登壇。広域連携GCFでプロジェクトをする意義をこう語ります。

トラストバンク代表取締役の川村さん

トラストバンク代表取締役の川村憲一
「ガバメントクラウドファンディングは通常一つ一つの課題をプロジェクト化しています。今回は共通の課題を解決していくため、広域全体で集まって行う広域連携GCFをやります。

もちろん一つ一つのプロジェクトを発信する形で全国に情報が広がりますが、これらが一緒になることでさらに発信力が高まります。まとめてプロジェクトにすることで皆さんの活動全てが見えるんですね。1自治体ではなく、全体で影響力を発揮していこうという取り組みです。

7自治体がGCFを使ってプロジェクトを進めていきます。『島を守りたい』という寄付者から賛同してもらい、地元の事業者も巻き込んで地場産品の魅力発信も同時に行うプロジェクトになります。

このように島を大切に思う方々が一致団結して地域の課題解決に取り組むことこそが地域の活性化につながる。やはり『』なんですね。ふるさとチョイスはこうしたプロジェクトを全国に広げていき、ふるさと納税を活用して地域の課題解決を目指していきます」

| インタビュー:寄付文化ブランディングチーム担当者・嶋宮さん

広域連携GCFを担当した寄付文化ブランディングチームの嶋宮さゆりさんに、プロジェクトに込めた想いや自治体さんに伴走した過程をインタビューしました。

ふるさとチョイス事業本部 寄付文化ブランディングチーム キュレーター・嶋宮さゆり
埼玉県入間市出身
大学卒業後、インフラIT企業へ入社。法人向けソリューション営業を経験したのち、顧客と一緒にモノづくりをしたいと考え、NBとPB商品両方を取り扱う食品メーカーへ転職。業界TOPの大手小売業の本部バイヤーと折衝する中で、協業して生み出すことに関心を深め、まちづくりに携われるトラストバンクへの入社を決める。現在は、自治体の課題を解決するGCFプロジェクトの企画・立上げ、特集企画、GCFブランディング業務に従事。

ーGCFを立ち上げるまでの経緯を教えてください

広域連携GCFの仕組みを知った奄美市の担当者さんから「世界自然遺産を題材に広域連携ができないか」と相談がありました。私はトラストバンクに在籍して1年ですが、今までそうしたお問い合わせをいただいたことがなかったので嬉しくて。

話を聞いてみると、資金調達のためだけではなく「他の自治体と協力して課題解決したい」という想いと、取り組みそのものをPRして広めていきたいというニーズがありました。ずばり広域連携GCFの趣旨と合致するなと思い、プロジェクトを始めることにしました。

そのなかで、世界自然遺産の登録エリア対象の自治体をしっかり打ち出していきたいと思いました。広域連携GCFを活用しながら特集ページとしても取り上げ、最もPRしやすい形で自治体の役に立てる方法を選びました。


ーGCFの担当者としてどんな想いでプロジェクトに取り組みましたか

GCF担当として広域連携GCFの仕組みを自治体担当者さんが認知し、問い合わせてくれたのは初めてだったので、純粋に嬉しかったですね。

担当者さんが本当に素敵な方で、役に立ちたいという想いもありました。

柔軟に「なんでもやります」という一生懸命な方だったので、その人柄に惹かれました。「この人が所属している自治体の役に立ちたい」と。

自治体は担当者のやりたいことがあっても、組織のルール内で行う必要があり、なかなか実現できないことがあります。「柔軟に動く」というのは個人なら簡単ですが、組織で歯車を動かすのは大変なこと。だから、組織の中で柔軟に取り組んでもらえたのはすごいことだと思います。

|「自然保護」という課題を前に、芽生えた使命感

ー奄美市の担当者さんから自然保護の課題があると聞きどう感じましたか

この案件に携わるまで、世界自然遺産についてよく知らなかったんです。「世界自然遺産登録」と言われると、観光客が来て地域にお金が落ちるというイメージがありますし、ネームバリューも高まります。だから良いことだらけじゃないか、と思っていました。

でも、色々な課題を聞いて調べていくうちに、観光客が増えることで地元の環境が悪くなる可能性もあることが分かりました。今まで人が入ってこなかった場所に踏み入れてくる。生活面でも道路が混むなど行来しづらくなる。地元の人が通常の生活を送れていたのに、観光客の増加でかえって快適ではない生活になってしまうんです。地元の人があまり喜べない側面もあると思います。

世界自然遺産に登録されたからには国が守ってくれる。勝手に保護や維持がされていくだろう。

と、自分勝手に思っていましたが、もちろんそんなことはなくて。世界遺産に登録されるだけでなく、実際は遺産を整備してくれる人がいて、それをきちんと保護・維持していくことの方が大変なんだなと感じました。

案外、私みたいに「世界自然遺産登録=良いこと」と思っている人は多いのではないでしょうか。だからこそ、登録されるほど価値のある遺産なんだと伝えつつ、そんな価値の高い遺産を今生きている私たちがみんなで守っていかなくてはならない

その選択肢の1つとして、税金を使って支援できる「ふるさと納税」がある。この仕組みで自然保護をはじめとする取り組みを応援してもらいたい。担当者さんから課題を聞いたことで、そんな使命感を持つようになりました。

| 部署や自治体の垣根を越えて実現

ープロジェクトを立ち上げるまでに最も大変だったことはなんですか

幸い、自治体さんと社内のチームに恵まれたので、特に苦に感じたことはありませんでした。共同記者会見を実施しましたが、その前にきちんとGCFの取り組みを広めたいと思い、各部署に発信方法を相談したんですね。

通常であれば、プレスリリースのみで終わることが多いですが、社内のあらゆる手段を駆使しようと思っていたときに広報渉外部が共同記者会見を提案してくれました。私自身、記者会見は初めてだったので教えてもらいながら臨みました。

特に、記者会見のタイミングは慎重に考えました。メディアはオリンピックの話題で持ち切りだったので、いつ会見を行うのがベストか社内外で話し合いました。

また、登壇するのが5自治体もいたので、首長のスケジュール調整にも努めました。企画が一番大変だと思っていましたが、案外、調整の部分が大変でした。

同じ頃、通常のキュレーターの仕事で全7自治体分のGCFプロジェクトの立ち上げにも関わっていました。どのようにすれば寄付者の共感を呼べるかなど、企画の相談を7自治体へ同時並行で進めながら特集の取りまとめをしました。


ーGCFページを作る上で工夫したことやこだわりはありますか

初見の人がページを見て何を表しているのか、直感的かつ視覚的に分かるのが大事だと考えています。今回は比較的に文字量を少なめ、写真を多めにし、沖縄県と鹿児島県が共同制作した動画も加えてみました。

ページにたどり着いた人に「奄美・沖縄が世界自然遺産に登録された」とわかるだけではなく、「素晴らしい自然がある一方で課題もある」ことが端的に伝わるようにしました。


ー最後に今後のプロジェクトへの意気込みをお願いします

5自治体が参加する共同記者会見も実施でき、これだけみなさんに力を借りたプロジェクトなのでしっかりと寄付を募っていきたいです。

さらに、「GCFを使えばこうやって課題を解決できるんだ」と寄付者さんやさまざまな自治体さんに思ってもらいたい。サービスを認知してもらえるように奄美・沖縄の自治体さんに一生懸命に伴走して目標寄付額を達成したいです。いつか、「プロジェクトを立ち上げるなら嶋宮」と呼ばれるのが目標です。

<関連ページ>
「世界自然遺産に登録された奄美・沖縄の7自治体とふるさとチョイスが、ふるさと納税制度を活用した、広域連携ガバメントクラウドファンディング®で、奄美・沖縄の自然環境保護のため2750万円の資金調達を開始」(2021.08.13)
クリップボードにコピーしました